読書ガイド

人工知能研究は領域が膨大で、内容をきちんと理解しようとすれば数学やプログラミングの知識も必要となるため、専門家でない人が勉強しようと思っても、どこからはじめたらよいのか途方に暮れてしまいます。このプロジェクトのメンバーも、多くは哲学研究者で、大学レベルの数学やコンピュータ科学を正式に勉強したことがあるわけではありません。そのようなメンバーがいろいろな文献を試行錯誤で読み進めた経験を踏まえて、専門家ではない人が人工知能について勉強するのに適していると思われる本を以下で紹介します。

*随時内容を追加、更新していきます。
*とくに断り書きがないかぎり、このページの記述は鈴木貴之によるものとなります。各著作の難易度などの評価も、鈴木の個人的な印象に基づくものとなります。
*書名をクリックするとAmazon.co.jpの商品ページに移動します。

人工知能一般

人工知能研究全般に関する教科書としては、つぎの本が世界標準となっています。主要な手法や応用は一通り押さえられており、なぜある手法を用いるのかや、ある手法にはどのような強みや弱点があるのかということもしっかりと説明されています。とはいえ、この本は人工知能を専門とする学生向けで、全28章、1000ページ以上もある膨大なものです。各章も、その話題についてのダイジェスト的な内容になっているため、しっかりと内容を理解するには、個別の主題についてのもう少しくわしい解説書を参照する必要が生じることもあります。また、邦訳があるのは2003年刊の第2版までで、それも現在は品切れです。とはいえ、この本が現在の人工知能研究のもっとも信頼できるリファレンスであるのは間違いないでしょう。

なお、われわれのプロジェクトではこの教科書の読書会を行っており、各章の要約をこちらで公開しています。

Russell, S., and Norvig, P. (2021) Artificial Intelligence: A Modern Approach (Fourth Edition). Pearson.

『エージェントアプローチ 人工知能(第2版)』共立出版、2008年(2つ前の版の邦訳ですが、前半部分の内容は第4版と大きくは変わらないと思います。)

日本語で読めるもう少しコンパクトな教科書としては、たとえば以下のような本があります。

J・フィンレー、A・ディックス『人工知能入門ー歴史、哲学、基礎・応用技術』サイエンス社、2006年(この本は現在品切れのようです)
谷口忠大『イラストで学ぶ 人工知能概論(改訂第2版)』講談社、2020年

機械学習

機械学習関連の多くの教科書はつぎの2冊(3冊)の本を参考にして書かれていると思われるので、本格的に勉強するならば、これらを読むのがよいでしょう。ただし、大学レベルの数学(微分積分、線形代数など)の知識がないと内容をきちんと理解できません。

C. M. ビショップ『パターン認識と機械学習(上)』丸善出版、2012年
C. M. ビショップ『パターン認識と機械学習(下)』丸善出版、2012年
Trevor Hastieほか『統計的学習の基礎』共立出版、2014年

後者に関しては、同じグループによるつぎの本の方がわかりやすく、各手法の背景にある発想についても、もうすこしくわしく説明されています。

Gareth Jamesほか『Rによる統計的学習入門』朝倉書店、2018年

機械学習全般に関するもうすこしわかりやすい教科書としては、つぎの本があります。数式があまり出てこないので、直観的な理解にはよいと思います。

柴原一友ほか『機械学習教本』森北出版、2019年

深層学習

日本語で読める標準的なテキストとしては、以下の2冊があります。きちんと内容を理解するためには、大学レベルの数学の知識が必要です。数学に慣れていないと式変形を追えないことがありますが、読書会などで使用している人も多いので、ネットで検索すると式変形の解説などが見つかることも多いです。われわれのプロジェクトでも、後者(の第1版)をテキストにした読書会をしました。

瀧雅人『これならわかる深層学習入門』講談社、2017年
岡谷貴之『深層学習(改訂第2版)』講談社、2022年

よりコンパクトな解説としては、つぎの本があります。これは、人工知能学会の学会誌の連載をまとめたものです。章によって著者が異なり、教科書と論文集の中間のような感じです。畳み込みネットワークなど、いくつかの話題についてはくわしく書かれています。

人工知能学会監修『深層学習』近代科学社、2015年

つぎの本は、いくつかの章で数式の直観的な意味が詳しく説明されているので、瀧本や岡谷本と併せて読むと、理解の助けになります。自己符号化器の話はありません。

手塚太郎『しくみがわかる深層学習』朝倉書店、2018年

つぎの本はマンガで、数学的な話は出てきませんが、深層学習で何をやっているのかということの直観的な理解には有用だと思います。

大関真之『機械学習入門』オーム社、2016年

ニューラルネットの働きの数学的説明を基礎から説明したものとしては、たとえばつぎの2冊があります。ただし、前者でも、誤差逆伝播法の説明には偏微分が出てきます。また、畳み込み、リカレントネットワーク、誤差逆伝播法の話はありますが、自己符号化器の話はありません。

涌井貞美『高校数学でわかるディープラーニングのしくみ』ベレ出版、2019年
立石賢吾『やさしく学ぶディープラーニングがわかる数学の基本』マイナビ、2019

最終更新:2022年1月29日